舞ひあそぶ

神楽のこととか、備忘録の掃き溜め。

鬼踊れ!読んだ

東京で、郷土芸能部つくって、頑張る青春物語……という、普通だったら1mmも触らない漫画だけど、岩手の鬼剣舞と、鹿踊だったから、とりあえず3巻までごそっと買って一気読み。

鬼剣舞とぷりちー鹿踊の描写が大変よかったです。
ぷりちー鹿のビタンビタンとか、萌ポイントが押さえられている素晴らしい漫画。

鬼剣舞なのに、タイトルが踊れなのはちいと不服ですが、言葉のリズム的なこともあるんでしょうか。まあそこはいいけど。


多分これは、石見の人なら、ある程度の共感をもって読めるところもあるのかなと思いました。
郷土芸能への愛と在り方、心の持ち方とかの揺らぎ。


私はゼミの合宿で見たきりなのだけれど、事前学習の発表で初めて見たなんだこりゃ!と、実際に現地で見たなんだこりゃ!!!の感覚を、鮮明に思い出しました。ブワッッときた。
そのときの自身、そして初めて石見神楽を見たときの自身もまた、登場してくる青春ボーイズたちと同じ顔、心持ちだったのだろうなあと思って、口のなかがしょっぱくなる。今はもうどこかに置いてきちゃったから。

今回の旅ではほぼ確実に見られないけど、また見に行きたいものです。



興味深かったのは。
一つは、東北、なかでも岩手は芸能どころにもかかわらず、あえて鬼剣舞をメインにしたところが、北上において感じた鬼剣舞の絶大な人気と、あとまあおまけで鹿踊、虎舞、そしてよくわからないなけどついでに神楽、という序列をある意味で忠実に描写してること。
北上とその近辺?には修験道の色が濃い大乗神楽があるんだけれど、本当に全然神楽熱が感じられなかった。観光協会ですら、えーーーと、花巻市に行かれたら詳しいことわかるんじゃないですか?という感じ。いやいや、和賀とかやっとんさるでしょ、と思ったくらい。
今は、どんな様子かわかりませんけど。

私は私で、ぷりちー権現様の印象が強すぎるので、偉そうなことは言えない。

二つは、題材が、あえての岩手、あえての鬼剣舞であったけれども、神楽はきっと題材にならない、ということ。
神楽舞のひとつとされる中野七頭舞だったかな?は、東京の学校でやっとられます。それも、土地にゆかりのある人が東京で始められたのが最初じゃあなかったかな。ゼミの仲間の発表のおぼろ気な記憶。

地方から出てきて、自分の土地の芸能を都会の教育の場にもたらす、ということは、漫画にもあったけど、継ぐことのひとつの面だと思う。反面、どうしても、当地で舞い継ぐ人たちとの齟齬は生じてしまう。それは、仕方ないことと思います。仕方ないことだけど、仕方ないからと居直る、居直り方には気を付けないととも思う。

そう、それで、なんで神楽はならないだろうなと感じたかといえば、うまく言えないけれど、やっぱり、その土地で生きている物だからかなって。同じ郷土芸能のなかでも、その土地だからしっくり来るもの、というか。
根拠はない。
ただ、うーん…よさこいは対極にいる気がする。
誰でも受け入れる、ということがなんとなくしにくいというか。
あと、子どもがパッと見でめっちゃかっこいい!となるものが少ないというのもあるかもしれません。
神楽といえば、「お神楽」浦安の舞?巫女舞のイメージが強すぎる。

あ、花祭は東京でもしてるけど。学校ではない。

基本的には、もぐもぐ咀嚼して、味わう系というか。
都会ではハイカルチャーに分類される感じ。

あえて、もとは宮の神事だから、ということはいいません。神事をルーツに持つのは神楽だけではないし、文化の生まれるひとつの要素として、宗教は大きく作用しているので。


あと、これは石見特有かもしれないし、他を知らないのでわからないけど、本当に神楽をやりたい人は、その土地に残る、あるいは帰る、というのも、あるかなって。

神楽を愛する人で、都会に出てきた、都会で生きていく、だから教育の場で故郷の芸能を伝えていこう!という人の率が少ないんじゃないかという仮説。

まあ、わかりません。本当のところは。
無責任に発言しているだけ。



あと、これは私の持論だけれども、神楽は、一番顕著にその土地が必要としていた祈りを表すから。他の土地に行ったら求める祈りは変わるから。
あと、それを表現するための方法、肉付けをした宗教者が微妙に順番とか土地での重要度とか違う。

だから、同じ「神楽」という名の元に全然違う芸態で全国に分布しているのだと思います。

穏やかに、平和で豊かに暮らしたい、という根本は一緒かもしれないけれど、そこに至るまでに必要とされる祈りは違う。

太陽に恋い焦がれる気持ち、飢饉はもう嫌だという気持ち、祖先を思う気持ち。




わからないけど、だからこそ、現代において、その土地に伝わる神楽の根本を揺るがすような改革は、起こり得ないでしょう。


ただし、なにか、人知を超えたことが起きたとき、失われていたものが復活することはある。
その土地の祈りが戻ってくる。



ぼんやりと、そういうこと考えさせる漫画でありました。
でも、あまりに青春臭いので続きあったら買うかわからないなあ。

登場人物多いし。鬼剣舞やりはじめたら誰が誰かわからなくなるし。なんなら、本物見たいし。